mtakeshidpostjpの「宵越しのキオク」

はてなブログに帰ってきました

見る人によって評価が分かれるであろう3本のディズニー映画(mtakeshiがトゥモローランドに期待している理由)

たまーにdpost.jpで書く、ニュースじゃないブログっぽい感想記事です。

魔法にかけられて」の衝撃

皆さんは2007年に公開された映画「魔法にかけられて」(原題:Enchanted)をご覧になりましたでしょうか。この映画は公開までかなり長い時間がかけられており、やっと「Enchanted」の概要が出てきたとき、見る前から成功を予感していたのを思い出します。dpost.jpで取り上げたのは2001年でした。

 

 しかし、実際に映画館でこの映画を見たあとの感想は、実は「恐ろしい」だったりしました。いえ、映画としては最高の作品だと思っていますし、いまディズニー映画に興味を持ち始めた人に1本お勧めするならば、いまもこの作品を推します。一切の前提知識が必要がない上に、最高のエンターテイメントに仕上がっている。しかし、この映画の恐ろしいところは、鑑賞者の「ディズニー知識」がそのまま跳ね返ってくる仕組みになっていること。

 

 なんとも説明がしがたいのですが、「トリビア的な小ネタが多い」というだけじゃないんです。この作品の構成自体、アラン・メンケン氏が説明するように「ディズニー映画の歴史をなぞっている」ことや、そもそも冒頭の15分程度のアニメパートのさらに前半、「True Love’s Kiss」の3分だけで、ディズニー初期のプリンセス映画のストーリーをなぞっています。過去のウィッシングソングからハッピーエバーアフターまでを、たった3分で!もはや白雪姫は3分で凝縮できるわけです。そのほかにもディズニー伝統の「絵本」から始まるなど、ディズニーへの知識量があればあるほど、さまざまな細かなものが見つかるというわけです。製作者たちはどれだけDヲタなのだ! ということで、ディズニー知識が以前より増えた、という方はこの作品をいま、再鑑賞することをお勧めいたします。そのうち、きっと「恐ろしい」と表現した意味が分かるはず。

これと似たような感覚を得たのは、こちらも評価の高い「ウォルト・ディズニーの約束」(原題:Saving Mr.Banks)です。こちらについては、クソ長い記事を書きました。試写会で見せていただいてこちらも「恐ろしい映画を作ってきたなあ…」という感想を得ました。

mtakeshiが「トゥモローランド」に期待する理由

そして、またこの「恐ろしい」シリーズにもう1本加わるであろう作品があります。もうお分かりですね。「トゥモローランド」です。ここ最近ずっと追いかけているわけですが、その流れは下記の記事をちょこちょこと読んでいただければ。

 

 で、本当に申し訳ないと思ってるのは、私がこの動向(主にPlus UltraとStop Plus Ultraのリアル謎解き)を取り上げることで「前提知識がないとおもしろくないのかな?」と思わせてしまったかもしれないこと。まだ見てないので分かりませんけれど、「魔法にかけられて」「ウォルト・ディズニーの約束」と同じように、きっとこの作品も間口は広く、誰でもがなんの前知識もなく楽しめる作品に仕上がっていると思います。ブラッド・バード監督はそういう人だと思っています。

 

 ですが、きっと、この作品も、ウォルト・ディズニーの「パークにかける思い」を知る人にとっては、おそらくですが「恐ろしい」ものに仕上がっているはずです。

 

 ウォルトの歴史において(ウォルト・ディズニーの約束と同様、書物や映像に残る“表向きのキャラクター化されたウォルト”)、テーマパークの未来は「EPCOT」に向かい続けていました。これはウォルト・ディズニー・ワールドにあるEPCOTではなく、実験的未来都市の原型(Experimental Prototype Community of Tomorrow)のほうのEPCOTです。彼はその完成を見ることなくこの世を去りました。結果としてEPCOTの名前はテーマパークとして残りましたが、彼が夢みたものとは大きくかけ離れており、ウォルトが好きな人にとって、それはとても無念なことだったと思うわけです。

そうなると、もしウォルトが生きていて、本物のEPCOTを作ったとしたら……と思うのは自然な発想ですね。今回、その思いが「映画化」されているわけで、そのバックグラウンドを知るものと、そうでない普通の人が受け取るこの映画の意味がそもそも違うわけです。知識があるからいい、知らない人は悪いではなく、見方が変わってしまうという意味で。

 

 ほとんどの場合、バックグラウンドを知るものはないがしろにされてきました(原作付きの実写化はだいたいそう)。が、そうじゃない作品をここ10年で2本も作ってきたのがディズニーというメディア企業です。だからこそ、私はこの「トゥモローランド」に注目してきているわけです。

 

 結論として、この映画がマニア向けではなく万人向けに作られ、評価されたとしたら大変な「傑作」になるはずで、この構成——Plus Ultraという秘密結社が世界を変えようとしており、その末端組織として「ディズニー」がある——はディズニーのテーマパーク作りにも大きな、大変大きな存在になるはずです。だからこそ、日本における予告では一足先に(いまだ本国では極々限られた範囲でしか公開されていない)イッツ・ア・スモールワールドのシーンを先行して公開し、言ってみれば「本国版予告だけでは絶対に興味を持たないであろう層」にもアピールできており、多くの方が体験できるようになっているのではないかと思います。私はこの作品が、10年後あたりに振り返って「あそこからパークが変わった」「ウォルトを知るきっかけになった」と評価されること願っています。

 

 「“ディズニー長編アニメ”マニアへのリトマス試験紙」が登場し、「“ウォルト・ディズニー”マニアへのリトマス試験紙」が公開され、今度は「“ウォルトの作りたかった世界”マニアへのリトマス試験紙」となる作品が公開されようとしています。私はこの「トゥモローランド」という作品が楽しみでしょうがありません。ぜひ、皆さんの感想も聞きたいと思っています——「恐ろしい」は禁句で(自分含めてね)。